【すぐ取り組める】野球選手が風呂上がりにするべきストレッチプログラム(初級編)

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プログラム概要

「もっと野球が上手になるためにストレッチをしたい。」
「ストレッチをしろ、と言われるが、どんなストレッチをすればいいのかわからない。」
「どうせやるならちゃんとしたことをやりたい」

このような悩みを持つ方も多いでしょう。

今回は、「野球選手が風呂上がりにするべきストレッチ(初級編)」と題し、このようなお悩みに応えるプログラムを配布いたします。
このような悩みを抱える選手は、まずはこちらの資料を参考に取り組んでみてください。

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こちらの記事は、これらのプログラムをより深く理解し、実践したい方に向けたものになります。
とりあえず取り組んでみたいという方は、資料のみでも十分の内容となっておりますので、続きは資料をダウンロードしてご覧ください。

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一覧画像はこちら↓

プログラムの詳細を知りたい方は、是非続きをご覧ください。

ストレッチの役割

なぜストレッチなのか?

なのになぜストレッチを紹介するのか?
大きな一つの理由が、「取り組みやすさ」にあります。

「もっと野球が上手になりたいけど、何をすればいいのかわからない」
「なんとなくストレッチをやった方がいい気がする」

このような気持ちになったら、難しく考えすぎずにまずは取り組んでみましょう。

ストレッチだけでは不十分とは言いましたが、もちろんやるに越したことはありません。

高校およびプロの選手において、プレシーズンの肩関節可動域および筋力の低下は、腕や肩の一般的な傷害の有意な危険因子であった。3)

プレシーズンにおける低い伏臥位外旋比率と利き肩の90°外転内旋の低下は、高校野球投手における肩および肘の傷害の有意な危険因子であった。4)

このように、可動域[ROM]の低下という事象は、怪我の危険因子となります。

そして、ストレッチは可動域[ROM]の改善を促進するために有益であるとされています。↓

静的ストレッチングを用いたストレッチングを週5日以上、週5分以上実施することは、ROMの改善を促進するために有益であると考えられる。1)

決してストレッチをすることは無駄にはならず、怪我の予防に役立ちます。そして、怪我をせずに練習を続けることが、野球が上手になることにも直結するのです。

今回の初級編は、1日10分前後で終わる内容となっています。
取り組みやすさを重要視して作成しましたので、是非気軽に取り組んでみてください。

なぜ「風呂上がり」なのか?

なぜ私が風呂上がりのストレッチを勧めるのか?

理由は大きく2つです。

①加温療法とストレッチは相性が良いため
②習慣にしやすいため

①加温療法とストレッチは相性が良いため

ストレッチングの前処置に温熱療法が効果的であるとされている。これは、ストレッチングの対象となる軟部組織を事前に加温することで組織の粘弾性を低下させ、伸張性を高めることができるからである。5)

さらにこの伸張性の増加により、ストレッチングなどの運動に伴う組織断裂のリスクも軽減する。6)

一般に、筋肉は温度が高くなると伸び縮みがしやすくなるとされています 5)
これは、加温によって筋肉を構成する組織の伸張性が向上するという、非神経学的要素に基づいた効果によるものです7,8)

また、筋の加温は、神経生理学的観点からも筋緊張を抑える可能性を持っています。
筋肉を伸び縮みさせる信号が過度に反応すると筋肉は硬くなってしまいますが、筋を温めることによってこの信号の興奮性が低下し、筋緊張が低下するとされています。7,9,10)

上記の文献で挙げられている加温療法は、超短波療法、超音波療法、直線偏光近赤外線療法11) などであり、温浴(お風呂)による効果は不明です。
しかし方法は何であれ、筋温の上昇が重要であるため、お風呂上がりにストレッチを実施することで、より高い効果も見込めると考えることができます。

こちらのような振動マッサージツールでも筋温を上げることができます。マッサージや温浴で筋温を上げてからストレッチすることで効果が期待できます。


②習慣にしやすいため

お風呂上がりのスキンケアって、忘れることなくほぼ毎日行いますし、ある程度決まったルーティンがありませんか?

筆者は、
①化粧水・スキンケアクリーム・美容液を顔に塗る
②余った化粧水・美容液を首肩に塗りたくる
③ヘアミルクを髪に馴染ませる
④ドライヤーで髪を乾かす
です。

ここに⑤ストレッチをする
を加えるだけですね。

最初は色々考えるかもしれませんが、ルーティン化・習慣化してしまえば、継続できるはずです。

まずは何よりも継続することが重要です。

ストレッチの選択

今回のストレッチは、以下の野球選手にとって重要な動作と、筆者の経験を元に選んだ、特にストレッチが必要な筋群から抜粋しています。

野球選手にとって重要な動作

  • 股関節の伸展動作(パワーの発揮)
  • 片脚支持の安定性
  • 胸郭の可動性(側屈、回旋、屈曲-伸展)
  • 肩甲帯-胸郭の安定性
  • 肩腱板筋の適切な収縮

動作の詳細については別記事で解説していきますので、今回はスルーさせていただきます。

特にストレッチが必要な主要筋群

上記の動作をスムーズに行うために、ストレッチが必要な筋群がこちらです。

  • 大胸筋・小胸筋
  • 広背筋
  • 大腿筋膜張筋
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス
  • 内転筋群
  • 下腿三頭筋
  • 肩のインナーマッスル
  • 臀筋群

この辺りの主要な筋群を包括的にケアできるような種目を選択しました。

細かい動作や筋のストレッチも重要ですが、まずはこの主要な部分をケアしておけば間違いなしです。

ストレッチ解説

全ての種目を通して、1セットにつき30秒間、ゆっくりと伸ばすことを忘れないでください。
可動域を向上させるための持続時間として、30秒が効果的であるとされています。2)

複合的なストレッチ

ブレッツェル2.0

胸まわり、腰、お尻など、複合的な全身のストレッチです。ゆっくりと呼吸をして、肋骨を大きく動かしましょう。

胸のストレッチ(大胸筋・小胸筋)

ウォールアシストストレッチ

このストレッチでは前胸部と言われる胸の前方部〜前腕にかけてのライン全体を伸ばすことができます。

肩甲骨の動きに大きく関わる「小胸筋」のストレッチも兼ねています。
この筋の柔軟性が低下すると、肩甲骨の動きにエラーが出やすく、肩や肘の痛みに直結します。

背中のストレッチ(広背筋)

四つ這いアームリーチ

オーバーヘッドスポーツで硬くなりがちな背中(広背筋)のストレッチです。
肋骨を背中側に広げるようにゆっくりと呼吸します。

ラットグリップストレッチ

こちらも背中(広背筋)のストレッチです。
お尻に体重をかけ、脇腹をゆっくりと伸ばします。

股関節前のストレッチ(大腿筋膜張筋・大腿四頭筋・腸腰筋)

ハーフニーリング(ER)ストレッチ

股関節の前面、前ももをストレッチします。お尻に力を入れるように意識するとよりストレッチを感じることができます。

また、股関節を捻ることで、股関節の横の筋肉(大腿筋膜張筋)がよりストレッチされます。
腰痛や股関節の痛みの原因となりやすい筋を伸ばすことができます。

股関節内・後のストレッチ(内転筋群・ハムストリングス)

ジャックナイフストレッチ

ハムストリングスといわれるもも裏のストレッチです。膝を伸ばし続けながらも、胸が腿から離れないように注意しましょう。

開脚ストレッチ

もも裏と内腿のストレッチ。内腿は硬くなりやすい部位の一つです。

ふくらはぎのストレッチ(下腿三頭筋)

ダウンドッグストレッチ

ふくらはぎが特に伸ばされますが、腰〜下肢全体のストレッチにもなります。つま先の方向に注意しましょう。

足趾ストレッチ

ふくらはぎから伸びている、親指を動かす筋のストレッチです。
扁平足やシンスプリントなど、足部周りの怪我の予防になります。

肩インナーマッスルのストレッチ(ローテーターカフ)

バーアシストストレッチ

肩が動いたり、腰を反ったりせず、腕の身で動く範囲内でストレッチを行いましょう。

スリーパーストレッチ

肩のインナーマッスルのストレッチです。肩が床から離れないように、痛みの出ない可能な範囲内で行いましょう。

お尻のストレッチ(臀筋群)

シーテッドヒップストレッチ

お尻の外側に特にストレッチをかけることができます。

ヒップ90/90ストレッチ

股関節を軸に、体を前に倒します。
背中が丸まらないように、背筋を伸ばして行いましょう。

今回のプログラムに対応した再生リストはこちらから閲覧可能です。

プログラムダウンロードはこちら

Information

Sport Hack Labでは、今回のようなフリープログラムの他に、オンラインピッチングラボを運営しております。

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参考文献
1) Thomas E, Bianco A, Paoli A, Palma A. The Relation Between Stretching Typology and Stretching Duration: The Effects on Range of Motion. Int J Sports Med. 2018 Apr;39(4):243-254. doi: 10.1055/s-0044-101146. Epub 2018 Mar 5. PMID: 29506306.
2) Bandy WD, Irion JM, Briggler M. The effect of time and frequency of static stretching on flexibility of the hamstring muscles. Phys Ther. 1997 Oct;77(10):1090-6. doi: 10.1093/ptj/77.10.1090. PMID: 9327823.
3) Agresta CE, Krieg K, Freehill MT. Risk Factors for Baseball-Related Arm Injuries: A Systematic Review. Orthop J Sports Med. 2019 Feb 25;7(2):2325967119825557. doi: 10.1177/2325967119825557. PMID: 30828579; PMCID: PMC6390229.
4) Shitara H, Kobayashi T, Yamamoto A, Shimoyama D, Ichinose T, Tajika T, Osawa T, Iizuka H, Takagishi K. Prospective multifactorial analysis of preseason risk factors for shoulder and elbow injuries in high school baseball pitchers. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2017 Oct;25(10):3303-3310. doi: 10.1007/s00167-015-3731-4. Epub 2015 Aug 4. PMID: 26239860.
5) 網本 和:物理療法学(第3版).医学書院,東京,2008, pp50-61.
6) Warren C, Lehmann J, Koblanski JN: Heat and stretch procedures: an evaluation using rat tail tendon. Arch Phys Med Rehabil, 1976, 57(3): 122-126.
7) 竹内伸行:筋緊張の改善を目的とした寒冷療法と温熱療法の実践方法と臨床効果.理学療法,2012, 29(9): 1019-1026.
8) Mutungi G, Ranatunga KW: Temperature-dependent changes in the viscoelasticity of intact resting mammalian (rat) fast-and slow-twitch muscle fibers. J Physiol, 1998, 508(1): 253-265
9) 竹内伸行,田中栄里,桑原岳哉・他:直線偏光近赤外線照射が脳血管障害片麻痺患者の痙縮に与える影響―無作為化比較対照試験による神経照射と筋腹照射の検討.理学療法学,2008, 35(1): 13-22.
10) 竹内伸行,横澤栄里,桑原岳哉・他:直線偏光近赤外線照射による脳血管障害片麻痺患者の筋緊張抑制効果─サブグループ分析,無作為化比較対照試験による検討.理学療法科学,2009, 24(4): 599-604.
11) 竹内伸行,大澤諭樹彦:直線偏光近赤外線照射による筋伸張性向上の効果.理学療法学,2004, 31(6): 337-342.

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